起きているときはもちろん、眠っているときも毎日休むことなく繰り返されている呼吸。
この生命に欠かせない働きである呼吸によって、身体は無意識に体内に酸素を取り入れ体外へ二酸化炭素を排出する動きを行っています。
では、ヨガで大切とされる呼吸とは、この生命維持のための呼吸のことでしょうか?
いいえ。実は、ヨガでは意識的に行う呼吸を、「呼吸法=プラーナーヤーマ」と言い、重要視しているのです。
この呼吸法(プラーナーヤーマ)を身につけることで、身体や心、普段の生活にもうれしい効果がでてきます。
そう、意識的に呼吸をするだけで日常がもっと明るく、ハッピーになる可能性が!
本記事では、その呼吸法(プラーナーヤーマ)を、現役のヨガインストラクターが正しい方法とその効果と合わせてご紹介します。
Contents
呼吸と呼吸法は何が違う?
では、普段の呼吸と、ヨガの呼吸法(プラーナーヤーマ)の違いをみていきましょう。
まず、普段の呼吸は、先ほど紹介しましたが、「無意識」に行われています。そしてこれが、体内に酸素を取り込み二酸化炭素を体外へ排出するという、言わば体の中のガス交換を指します。
それに対し、ヨガの呼吸法とは意識的に呼吸を行うことで、体中に生命エネルギーを巡らせることを指します。
この生命エネルギーのことを、サンスクリット語でプラーナといいます。
このプラーナを意識的に体内でコントロールして巡らせることを、プラーナーヤーマと言います。
ポイントは「意識的に」呼吸を行うということ。
また、息を吸って、息を吐くためには、体内ではたくさんの筋肉が動き、内臓が動いています。
そのため、意識的に呼吸を行うことで、体内にもうれしい変化が起こります。
例えば、息を吸い込んだ時にお腹を膨らませる腹式呼吸を例に見ていくと、まずは横隔膜が下がり、内臓を押し下げる事で、肺が膨らむスペースを体内に確保します。
そして、約3億個あるといわれる肺胞が膨らみ、心臓を通して身体中へ酸素が供給されていきます。3億個ある肺胞で取り入れたれた酸素が、体内の約60兆個ある細胞へ届くのだから、体内を巡るエネルギーは絶大!
意識しない普段の呼吸では、『肺は30%の機能しか使われていない』という一説もありますが、
呼吸法を練習することで、呼吸で使われる筋肉も鍛えられ、肺機能を引き上げることも期待できます。また、呼吸量が増えると、内臓への刺激も行われるため、体内循環も良くなるとも言われています。
呼吸法の効果
心臓の鼓動や腸の動き、体温調節など、生命活動に必要な動きをつかさどる自律神経ですが、無意識の中でおこなわれているため、私たちが意識的に支配することはできません。
しかし、「呼吸」だけは自律神経の支配下にありながら、唯一私たちが自分でコントロールできるもの。そのコントロール方法を身に着けることができるのが呼吸法になります。
それでは、呼吸法の効果を紹介していきます。
①体のコンディションがアップ
呼吸法を身に着けることで、筋肉や内臓が刺激されるとお話ししましたが、内臓が活性化することで、老廃物の排出や血液の循環がアップします。これにより、便秘や冷え性の緩和が期待できるでしょう。
また、普段の何倍もの酸素を体内に取り込むことで、老廃物が体外へ排出されやすくなったり、ストレスによる疲労感も和らぐ効果があると言われています。
②マインドにも効果あり
身体だけではなく、心(精神面)にも効果が。
先ほど、自立神経の支配下で唯一コントロールできるのが「呼吸」とお伝えしましたが、ここ一番の勝負に出たい時に呼吸法が手助けをしてくれます。
例えば、緊張や不安から心臓の鼓動が速くなり、手足が少し冷たく感じるような時、呼吸法を実践することで、自分で自律神経配下にある動きをコントロールすることができるようになります。
酸素をたくさん取り入れ、リラックス効果や血液循環をアップさせれば、緊張や不安を緩和させられるでしょう。
「トップアスリートが実践 人生が変わる最高の呼吸法」という書籍が出版されるなど、近年、アスリートや経営者からも、呼吸法が注目されています。
呼吸法には、特別な道具も空間も必要ありません。全て「無料」できます。
多忙な現代人にとって、一番身近なのに忘れがちな呼吸。
ぜひ、この瞬間から意識的に呼吸をしてみてくださいね。
代表的な呼吸法
それでは、実際のヨガの呼吸法をご紹介します。
普段と同じように、ただ呼吸をしているだけでは、呼吸法 (プラーナーヤーマ)とは言えません。
呼吸法は、正しく行うことで効果が出やすくなります。
今回は、長年呼吸法を実践しているヨガインストラクターが代表的な呼吸法をご紹介いたします。
腹式呼吸
1.横になり脚を立て、腹部に手のひらを当てます。
2.鼻からゆっくりと息を吸い、お腹周りの動きを手のひらで感じます。
3.鼻から息を吐き、すべて吐き切るまで下腹部の動きを手のひらで感じます。
慣れないうちは楽な呼吸で、心地よいペースで行いましょう。
慣れるに従って、吸う吐くを同じ長さで行いながらゆっくりと安定した深い呼吸を意識してみてください。
楽に呼吸が続いている場合、吐く息の長さを吸う息の長さの2倍ほど時間をかけます。
(例:吸う:4カウント、吐く:8カウント)
呼吸に伴う身体の動きに慣れてきたら、手は楽なポジションに置き、続けてみましょう。
リラックス、慢性的な痛み、ストレスの軽減
胸式呼吸
1.楽な姿勢で座ります。
2.手のひらを脇腹に当て、ゆっくりと鼻から息を吐き切ります。
3.鼻から深く息を吸い、肺全体に息を送るようにしながら、肋骨が膨らんでいく動きを感じます。
4.鼻から吐きながら、上体の身体の動きを手のひらで感じます。
慣れないうちは心地よい楽なペースで行ってください。
慣れてきたら少しずつゆっくりと安定した深い呼吸で、吸う吐くを同じ長さで行いましょう。
手は楽なポジションに置きます。
リラックス効果、心肺機能強化
片鼻呼吸(ナディ・ショーダナ)
1.楽な姿勢で座ります。
2.左手の親指と人差し指で輪っか(チンムドラー)を作り、手のひらを下に向けて、そのまま膝に置きます。
右手は人差し指と中指のみを折り曲げます。
3.両方の鼻で完全に息を吐き切り、一息吸います。
4.右手薬指で左鼻をおさえ、鼻から吐きます。
5.右手薬指で左鼻をおさえたまま、右鼻から吸います。
6.次に親指で右鼻をおさえ、左鼻から吐きます。左鼻から吸います。
7.同様に薬指で左鼻をおさえ、右鼻から吐きます。
5〜7を1セットとし、8〜10セット繰り返す。
左右の吸気、呼気が同じ長さになり、正確に行えるようになったら、同様の手順で吸った後で息を止めます。(クンバカ)
※息の長さは、はじめは気にせず心地よいペースで行いましょう。
息を止めるクンバカは無理のない程度に2~3カウント程度からはじめて来てください。慣れてきたら、少しずつ長さを伸ばし、吸う吐くを同じ長さで行っていきましょう。
クンバカは5カウント程度で充分です。
不調を改善し、気分を爽やかにする、ストレスの軽減 、血圧を下げる
その他の呼吸法
ウジャイ呼吸
- 楽な姿勢で座ります。
- 背中はまっすぐ伸ばし、あごを引き込み、腹部は膨らませないようにし、下腹部を固定します。
- 鼻から息を完全に吐き切ります。
- 喉を少し締めるようにして、「スー」と音を立てて鼻から息を吸います。
- 腹部をひっこめ、鼻から息を吐き出し、横隔膜を徐々にリラックスさせます。
4〜5を5〜10分繰り返します。
- 腰部の保護する(ヨガでのバックベンド・ねじりも深まり、最適)
- ヴィンヤサのように動くレッスンでも下腹部を固定するので、アーサナが安定しやすい
熱を生み、体温をあげる 、ヨガ中におススメの呼吸法
完全呼吸法(紹介のみ)
腹式呼吸、胸式呼吸、鎖骨式呼吸を連動することで、呼吸筋をフル活動させ、各細胞を活性化させる呼吸法。
肺を最大限に使うため、ヨガのウォーミングアップとして用いられることも多いものです。
また、脳を活性化させ、負の感情を和らげる効果もあります。
基礎代謝力UP にも効果的でしょう。
カパーラバティ(紹介のみ)
短いスパンで鼻から強く吐き、自然に吸うことを繰り返す呼吸法。
座りながら単独で行います。
横隔膜を断続的に動かすことによって血行がよくなり、頭がスッキリします。やる気がないとき、思考をクリアにしたいときにオススメ、腹部の脂肪燃焼効果もあり!
朝や、空腹時に行うと効果的ですが、高血圧や心臓疾患、妊娠中の人は避けるようにしよう。
まとめ
呼吸法は、いつでもどこでも気軽に日常生活に取り入れることができます。
そして、日ごろから意識して行うことで、心身ともにメリットがたくさん。
まずは、この記事を参考に取り入れてみてくださいね。
多忙な現代人にとって、一番身近なのに忘れがちな呼吸。
是非、今この瞬間から、意識的に呼吸法をトライしてみましょう!