『ヨガを熱心にやっている人ほど自由を見失いやすい。』
腰の話から始まるのだろうと思っていましたが、意外にもこんな話から静かに始まりました。
テンセグリティ―ヨガ®などで全国的に活躍されているACO先生の腰痛改善ワークショップとあって、参加者のみなさんも前のめりで先生のお話に耳を傾けます。
例えば、私は仙腸関節がずれているからこれをしなければならないといった思い込みであったり、シンメトリーを目指すがゆえ、不必要とも思える練習を妄信的に毎日繰り返すことだったり、このポーズの後はこのポーズをやらないとなんだか気持ちが悪いといった感覚になること。
ヨガをすることで自由になったつもりが、不自由になっている人は多いのかもしれない。
参加者のみなさんも、そんな話に共感し、会場からは苦い笑い声も聞こえてきます。私もヨガで膝や腰を故障する人が多いと耳にします。
これは、ACO先生自身がたくさんの強度の高いヨガレッスンを抱えていた頃、ぎっくり腰を経験し、それを克服した経験から気づいたこと。
ぎっくり腰に悩まされていた当時、再発をさせないことを第一に生活上で様々な工夫をしたり、レッスンのために万全の予防とケアをし、有名な鍼灸院にかかったりと、日常生活すら不自由になったほど気をつかい、ヨガを教えている自分が不健康であることに自己嫌悪に。そして、一日中、腰への不安が消えない。
そんな中、アメリカのサーノ博士が唱えるTMS(the Tension Myositis Syndome: 緊張性筋炎症候群)理論を和訳した1冊の本と出会った。
腰の不調と聞くと、腰椎や腹筋・背筋といった身体の機能の不調と考えるのが普通でしょう。しかし、身体の構造上問題がない腰痛の場合、現代の医学では説明のつかないものも多い。
腰痛は、『TMS理論』では、心(感情)と身体が条件付けされ、ある隠蔽された感情の蓄積によって無意識に蓄積された緊張による身体への影響であるとしている。
この心と身体の条件付けを解除していくことが、TMSに則った心理的な療法であるとされています。つまり、身体ではなく、これまでの考え方を変えるということ。そのために『気づく』ということが一番大切とされています。
今回は、『腰』の場合の具体的なやり方として、いくつかのストレッチやヨガのポーズと注意点を教えてくださいましたが、これは痛みがあるときに、応急処置的にどう対処するかということ。
これとは別に、日常生活のなかでいかに良くしていくかが大切として、日常生活での身体の使い方のアドバイスや心理面のアドバイスをたくさんしてくださいました。これは腰に限らず、様々な身体の不調にもあてはまります。
ヨガのポーズも大切だけど、日常の中でできることがあるのであれば、それを取り入れない手はありません。
それは、平たく言うと、困難に立ち向かうときの心の持ち方をどうするかということでした。
先生も冒頭でおっしゃっていましたが、この講座は少しスピリチュアル的にとらえられることがあります。
ACO先生自身の経験からいくつか具体的なエピソードをお話ししてくださったのですが、私の印象に残ったのは『真の自分と向き合うことの大切さ』が語られた部分。
例えば、気に入らないことが起こったとき、嫌いな人について考えるとき『じゃあ自分は何を望んでいるの?』と自分自身に問うことが大切ですよ、と。相手に対して沸き起こる感情だけではなく、それに対して自分はどう感じるかに主眼を置くこと。その練習を積み重ねることが、気づきをもたらす。
一方で、身体を使ったペアワークでは、相手の身体を観て、気づく練習をします。これは、視覚野を広げる練習でもあります。一か所だけではなく、対象の全体を観たり、空間の中で対象を観る練習。これはもちろん自分自身の身体でもできます。
アーサナや身体と心理面の結びつきは切っても切り離せないので、この身体を観る練習は心を観る練習にも通じるのでしょう。
今回は、『腰痛』というテーマでしたが、腰痛に限らず、痛みや不調に悩まされているすべての方の参考になる内容になっており、とても満足の内容でした。