第14回「終日」

第14回「終日」
みなさまごきげんいかがですか?
ピラティス指導者のGingerです。

新緑の頃、いかがお過ごしですか?皐月の空は蒼く明るく、心が踊りますがそろそろ紫陽花を見かけ始めるようにもなりました。梅雨入りも間近です。雨が好きではないという人は多いですが、水に恵まれた日本には湿度の美があります。『しら紙にしむ心地せり五月闇』という暁台の句が私は好きです。カラッとした晴れも気持ちが良いものですが、しっとりとした闇や影は都市の騒音を吸い取るかのようです。

さて、立夏の日に三宮スタジオの1周年記念イベントとして、私が本町スタジオで昨年秋より全4回を予定に講義をさせていただいている女性の身体をテーマにしたワークショップシリーズ『たかめていく氣と血のめぐり ~ピラティスとアーユルヴェーダができること~』のスピンオフとでも言うべくミニ講座立夏編『睡眠の力を知る アーユルヴェーダとピラティス』を開催させていただきました。
アーユルヴェーダはいのちを見つめる生命科学でありインドの医哲学。良い生命を次の世代につなぐことを大切にしています。それゆえ健康の三大柱は『食事』『睡眠』『性生活』なのです。本町スタジオでのメイン講座でお伝えしているのが『食事』と『性生活』に関わる内容です。具体的には食養生、血、粘膜、ホルモン、膣のケアです。『睡眠』だけメインの内容としてはお伝えできずにいました。

アーユルヴェーダでは、眠りは神様からの贈り物と言われています。心の休息、そして体力の回復。質の良い眠りが良い目覚めをもたらし、良い一日を導きます。その積み重ねの先にあるのは良い人生です。
睡眠の質を高めることはピラティスやヨガ、また競技スポーツや武道などを日常的に行う人にとっても大切なことです。ジョセフ・ピラティス氏は『Your Health(1934年出版)』という著書で呼吸、衛生、食事について言及しています。つまり、運動のみを行うだけでは健康は得られず、生活全体を整えることを勧めています。ピラティス氏の生きた時代と比べてデスクワークの圧倒的に多くなった現代の私たちにとって、運動は日常生活の中で意識的に取り入れるべきものですが、休息の大切さも忘れてはいけません。また、パソコンや携帯電話、大きなテレビ画面などが当たり前となった現代社会では目の健康を守る必要があります。ブルーライトの影響は視力だけではなく、自律神経、また特に女性器の血流の悪さにまで影響します(メイン講座の第2回でお話しいたしましたね)。目を使い過ぎないでたまには休めること。暴力的な映像を見たり、心地良くないものを見ることを避けることも大切です。
何故そうする必要があるのでしょう?それは潜在意識に幸せなイメージのみを入れて眠るためです。今回のタイトルは「ひねもす」と読みます。ひねもすとは一日中を意味します。一日中、眠っている時でさえ良いイメージを心に描き続けながら過ごすことはその人の生き方を根本から明るく変えていける力があります。
image6 私は千里中央スタジオにて毎週金曜日の夜に身体をコンディショニングポールでほぐして呼吸を深めるクラスを持っていますが、やはり筋肉の強張りをほぐし、意識的に呼吸を行えば一週間の疲れが取れ、血流良くなり、顔色が明るくなります。そのままお家に帰ってぐっすり眠ると翌日土曜日の朝にピラティスのレッスンを受ける際に身体が楽に動くというお言葉をいただいたことがあります。眠る時間数よりも、どれほど身体と心がリラックスして眠りに入れるかが大事なのでしょうね。

今回のミニ講座(100分)ではメインのシリーズ講座を受けていない方にもアーユルヴェーダの基礎理論、土台の理解だけは出来るようにと内容構成をいたしましたが、細かいことは極力省きました。睡眠にまつわり必要最低限のアーユルヴェーダ用語や概念の解説をした上で、アーユルヴェーダ的、また現代医学的視点の両方で睡眠について講義をさせていただきました。また、身体と心をほぐす簡単なピラティスベースの動きと頭、耳、足の3点マッサージを。マッサージはVataの乱れを鎮める太白ごま油で。Vataを整えることで残り2つのドーシャも整います。Vataのエネルギーはお臍から下に流れますから、特に足〜脚のマッサージはトリドーシャを整えるのに有効ですね。
『眠くなっちゃいました』との感想をいただき、嬉しかったです。本当はそのまま寝かしてあげたかったのですが… 起こしてごめんなさい。とにかくみなさまそれぞれ無事に帰路についていただきました。

ピラティス氏の言葉に以下のようなものがあります。
“To achieve the highest accomplishments within the scope of our capabilities in all walks of life, we must constantly strive to acquire strong, healthy bodies and develop our minds to the limit of our ability.” –Joseph Pilates, Return to Life

『自分の仕事に於いて能力の限りを活かして最高の結果を得るために、我々は常に強く健全な身体を獲得する努力をし、自分の能力の限界まで精神を向上させねばならない。』

自分の能力を最大限に引き出すのは、リラックスが鍵だと私は思います。リラックスしている時は、つまり緊張をしていない時。なぜ緊張をするのか?自信のなさ、準備不足、評価への不安…様々に理由はありますが、身体が単純に疲れている時や眠気を感じる時、食べ過ぎた時もしくは酷く空腹な時、リラックスは難しいと思います。集中力を無理なく保つためには、まず自分がどうすれば一番心地よくいられるかを知ることです。私の場合はプライベートタイムが仕事の質を左右します。まさにピラティス氏のいう通りですね。身体や心を汚すことを極力避け、五感を喜ばせること、魂の求めることを優先的に行うようにしています。
image3 今回の講座で『魂を感じることはできますか?』というご質問がありました。例えば私は黄昏時の空模様や月の神秘さに刹那的にも日常の些事を忘れ感嘆の溜息をもらす時、魂が嬉しさに震えているように感じます。水に濡れた動物が体毛や羽毛に付いた雫をふるい落すように、魂が震えると汚れや澱みは剥がれ落ちるのです。健康であれば老廃物は毎日生成され、それらを滞りなく排泄できますが、魂の汚れも毎日少しずつ溜まるものです。できるだけ魂を浄化することを日々行うと良いです。志を持ち、他人や社会と調和しながら自分にも慈愛を注ぎつつ規律を保った生活を心掛けること。物や人に期待をし過ぎずに必要なものだけを持つ生活。身体や心を養生する食事や心を美麗にする言動。アーユルヴェーダはその具体的な方法をたくさん提案してくれます。

以前にコラム第7回でも魂のことについて書きましたが、私が今回の講座だけではなく全ての講座や普段のレッスン、もちろんこのコラム全てを通してお伝えしたいことは、身体と心と魂をつなぐことです。ピラティス氏、アーユルヴェーダ、ヨガの教え、古今東西の偉大な人々が提唱したBody-Mind-Spititの概念です。コラム第7回でも睡眠について言及していたことに少し驚きました。ご興味のある方は是非ご一読下さいね。Body-Mind-Spititについてはそちらに詳しく書いております。
image9 実は今回のミニ講座で私が最も熱を込めてお伝えしたのはこのようなアーユルヴェーダの『哲学』の部分でした。睡眠というテーマについて、もちろん講義はいたしましたが、細かいことはいくら時間があっても足りないくらいでしたし、どこかのインターネットサイトや本を見れば得られるような知識のみで終わるのは嫌でしたから、今の私がお伝えするべきことを優先させていただきました。それに食事も学びも腹八分目がベストなようですので、もうちょっと食べたい、聴きたいくらいでちょうど良いのかも知れませんね。
詰め込んで情報ばかりを得たところで、それを体現できなければ知識として身に付いたと言うには未完成ですから、焦らないで良いように思います。知っているけれど実行しないのは、知らないことと変わりないということです。
インド哲学の世界は難しく感じるかもしれませんが森羅万象に生かされているという感覚を自と培ってきた日本人には納得しやすい、馴染みやすいものです。 枝葉の教えよりも、根幹の教えを体感し体現することでその人らしさが輝き出します。賞賛とも批判とも無関心とも無縁の境地で、ただ自分自身に寛ぎ自分自身であることの尊さを認めていっていただけたらと。
私はこれからもみなさんの健やかな日々をお手伝い出来るように精進を重ねて参ります。どうぞよろしくお願い致します。ワークショップ開催の機会を得られましたことをとてもありがたく感じています。ご参加下さったみなさまありがとうございました。

では、また次の新月に。
自分のできることからコツコツと。穏やかに、終日ひねもす健やかにお過ごし下さい。



ワークショップ シリーズ
全4回 + 特別講座 (単一講座受講化。セット割引有り)
1710-1807_ginger_o 私がピラティスやアーユルヴェーダの指導を行う中で出会った様々な年代の女性たち。
彼女たちの願いを集約すると、やはり健康で若々しくあり続けること。
女性は毎月の月経を通して自らの血と氣のめぐりの状態を知ることができます。
さらに妊娠、出産を通じて血のコンディションは変わり、養生の方法も変わります。
今回のワークショップでは私の持つピラティスの知識に加え、アーユルヴェーダや東洋医学、薬膳の智慧をお借りして女性の血と氣のめぐりの養生法を見直します。
日常生活に取り入れやすい季節ごとのセルフケアや食養生など、実践できることを中心にお伝えします。
シリーズでお届け致しますが、もちろんお好きな受講スタイルで大丈夫です。
なお男性のお客様、ご夫婦でのご参加も大歓迎です。

第一回 秋編日  程2017年10月1日(日)
時  間14:30~17:30(3時間)
本町スタジオ (終了しました)
血のめぐりと質を高める アーユルヴェーダとピラティス
特別講座 冬編日  程2018年1月28日(日)
時  間①10:30~13:30 ②15:30~18:30
大阪 刻屋 (終了しました)
特別講座 冬編 『女性力を高めるアーユルヴェーダ式食養生とピラティス』AyamiとGingerによる ピラティス&アーユルヴェーダ食養生
第二回 春編日  程2018年3月4日(日)
時  間14:30~17:30(3時間)
本町スタジオ(終了しました)
粘膜を強化して女性力を高めていくアーユルヴェーダとピラティス
ミニ講座 立夏編日  程2018年5月5日(土)
時  間13:45~15:15(90分)
神戸三宮スタジオ(終了しました)
睡眠の力を知る アーユルヴェーダとピラティス
第三回 梅雨編日  程2018年5月20日(日)
時  間14:30~17:30(3時間)
本町スタジオ (受付中)
ホルモンを安定させる冷え取りアーユルヴェーダとピラティス
特別講座 梅雨編日  程2018年6月3日(日)
時  間①10:30~13:30 ②15:30~18:30
大阪 刻屋(受付中 /第三回講座とのセット割引あり)
特別講座 梅雨編 『女性力を高めるアーユルヴェーダ式食養生とピラティス』
第四回 夏編日  程2018年7月8日(日)
時  間14:30~17:30(3時間)
本町スタジオ (受付中)
女性器のケアと向き合う アーユルヴェーダとピラティス


profile
PROFILE : Ginger(じんじゃ~)

  • フリーランス アーティスト
  • FTPマットピラティス 指導者
  • からだスキャン セルフマッサージ 指導者
  • Physical Mind Institute 認定 Tye4® Mat/Standing 指導者
  • Body Code System認定 Master Stretch® 指導者
  • アーユルヴェーダ セルフケアアドヴァイザー
  • 漢方・薬膳検定 保有
  • 英国にて衣装デザインと制作を学び、デザイナーとして様々な身体表現者たちと関わる。また6年近くに及ぶ異国生活で心身の不一致を感じ、そのコントロールへの興味を深める。
    帰国後、ピラティスに出会い指導者としてのトレーニングを受ける。
    アーユルヴェーダや東洋医学、薬膳の考え方を取り入れ、グループ・個人レッスン共に男女問わず幅広い年齢層を指導。 
    個々人自らが『感じる力』を磨くことを何よりも重要視している。
    英語でのレッスンや海外講師の通訳、人体経絡図の挿絵など、ピラティスと英語・アートをリンクさせた活動も積極的に展開している。
    近年はピラティスという分野を超えて、自然の中で呼吸や五感のワークを行うことも始めている。
    Instagram: @ginger_jinjya
    HP: http://junkoginger.blogspot.jp